スリップス(アザミウマ類)

Thysanoptera(Thrips)

スリップス(アザミウマ類)

 梅雨明けから夏にかけて大繁殖する吸汁性の農業害虫「アザミウマ」。別名スリップスとも呼ばれ、アブラムシと同様に初夏から初秋にかけ多種多様な植物に寄生する害虫です。寄生すると葉や花、果実から吸汁し変色・萎縮・奇形などがあらわれ、作物 に大きな被害をもたらします。発見も防除 も難しい微小害虫スリップス(アザミウマ類)です。

スリップス(アザミウマ類)防除に効く成分とおすすめ農薬

 どんなに気を付けても、どこからともなく侵入し繁殖してしまったら、速やかな防除が大切です。スリップス(アザミウマ類)には農薬が有効で、使用にあたっては種類によって有効なものを選びます。基本的に、有機リン系、フェニルピラゾール系の殺虫剤や、キチン合成阻害剤などが有効とされています。ただし、種類や成長段階によっても効きやすい成分が異なるため、発生状況に応じて選ぶことが大切です。

 特におすすめの農薬を紹介 します。なお、ここで紹介する農薬は2020年6月現在登録のあるものです。実際に使用する場合は必ず製品のラベルを確認し、地域の防除暦などの指導に沿って使用しましょう。

ネオニコチノイド系薬剤

 ネオニコチノイド系薬剤とは、昆虫の神経伝達を阻害することで殺虫効果を持つ殺虫剤の総称で、農業以外にも様々な用途で広く使われています。殺虫剤 としては、昆虫に選択的に作用すること、効果が長く持続すること、水溶性で植物の葉や茎によく浸透することが特徴で大規模に使われています。植物体全体に薬効がゆきわたるので、スリップス(アザミウマ類)のようにごく小さい害虫にも有効です。

 日本で現在農薬として登録されている有効成分は7種類で、これらを主成分とする代表的な殺虫剤 としては「ダントツ水溶剤」「モスピラン顆粒水溶剤 」「アドマイヤーフロアブル」などがあります。

カスケード乳剤

 ふ化や脱皮の際に表皮を作るために必要なキチン質を合成できないようにする効果のあるキチン合成阻害剤です。遅効性ですが効果が長く持続し、特に幼虫や新しく生まれた卵に効果を発揮するので繁殖が抑制できます。また、天敵や作物に有益な訪花昆虫への影響が少なく、生物農薬との併用も可能です。

 前述の、被害の大きな54種 のスリップス (アザミウマ類)をはじめ、ほとんどの種に効果があり、また、葉菜 類、果菜類、根菜類、豆類、果樹、花きなどほとんどの作物に使用できます。

コテツフロアブル

 有効成分のクロルフェナビルが害虫の体内で代謝活性化することで呼吸を阻害する、殺虫剤として唯一のピロール系呼吸系阻害剤です。ユニークな作用性をもつため、既存の殺虫剤に感受性が低下した難防除害虫に対しても高い効果を示します。

殺虫スペクトラムが広く、チョウ目、アザミウマ目、ダニ目、カメムシ目、コウチュウ目、ハエ目などさまざまな害虫に有効です。適用作物が多く、100以上の幅広い作物に使用できます。

 スリップス(アザミウマ類)は発見しにくく防除も困難で、繁殖が進むと作物全体を枯死させるほどの被害をもたらす厄介な害虫です。適切な防除対策と有効な農薬を併用し、早期発見、早期防除に努めましょう。